第 3 章 ストラテジ
経営・会計・法務の基礎。この章では次の 26 個の知識点を、解説・インタラクティブ教材・練習問題で学びます。
オンプレミスとクラウドサービス・SOA
サーバなどの IT 資源を自社で持って管理・運用するのがオンプレミス。自社施設で運用する従来型のほか、事業者のデータセンタに自社サーバを預けるハウジングサービス、事業者のサーバを借りるホスティングサービスがある。事業者が用意した IT 資源をネットワーク経由で使うのがクラウドサービスで、提供範囲の狭い順に IaaS(基盤)→ PaaS(OS・ミドルウェアまで)→ SaaS(アプリケーションまで)。システムを「サービス」という部品の組合せで作る考え方が SOA。
システムの活用(BYOD・RPA・BI)
情報を読み取り活用する力を情報リテラシという。情報リテラシや IT の利用環境の違いによって生じる社会的・経済的な格差がディジタルディバイド。システムやデータの活用例として、私物の PC やスマートフォンを業務に使う BYOD、人の定型作業をソフトウェアロボットで自動化する RPA、蓄積したデータを分析(データマイニング)して経営判断に役立てる BI がある。
EC・EDI・暗号資産
インターネットを使った電子商取引が EC(Electronic Commerce)。取引の形は「売り手 to 買い手」の頭文字で表す:B(企業)・C(個人)・E(従業員)・G(政府・自治体)。受発注・請求・支払などの取引データを、ネットワークで電子的にやり取りするのが EDI。ビットコインのような暗号資産は、取引記録をつなげて多数のコンピュータで共有するブロックチェーンで改ざんを防ぐ。取引の確認・記録の計算に参加して報酬を得ることをマイニングという。
Web マーケティングとオムニチャネル
Web サイトで販売を伸ばす手法:検索結果で上位に表示されるよう工夫する SEO、ブログなどに広告を載せ、そこから購入されると報酬が出る成果報酬型の アフィリエイト、利用者どうしのつながりで情報を広げる SNS、口コミサイトのように消費者が内容を作る CGM。店舗・ネット通販・アプリなど、どの販売経路でも同じように買えるようにするのが オムニチャネル、ネットから実店舗へ客を呼ぶのが O2O。ネット通販では、あまり売れない商品の売上の合計が大きくなる ロングテールが起きる。
エンジニアリングシステムと IoT
生産を効率化する仕組み:必要なものを必要なときに必要な量だけ作る JIT(後工程が必要な分だけ前工程から引き取るかんばん方式)、1 人〜少人数で完成まで組み立てるセル生産方式、生産計画から部品の必要量と発注時期を求める MRP、コンピュータで設計する CAD、設計データで製造を制御する CAM。これまでネットにつながっていなかった物をつなぐのが IoT で、家庭のエネルギーを見える化・最適化する HEMS、電子看板のデジタルサイネージなどがある。
経営戦略(コアコンピタンス・PPM・M&A)
経営戦略の代表的な手法:他社がまねできない自社独自の強みを生かす コアコンピタンス、優れた企業(ベストプラクティス)と比べて改善する ベンチマーキング、事業を市場成長率と市場占有率で 4 つに分けて投資先を決める PPM、企業の合併・買収 M&A、業務を外部に任せるアウトソーシング(業務プロセスをまとめて委託するのが BPO)。
事業戦略(SWOT 分析・バリューチェーン分析)
SWOT分析は、自社の内部環境のプラス(Strength 強み)とマイナス(Weakness 弱み)、外部環境のプラス(Opportunity 機会)とマイナス(Threat 脅威)を整理して戦略を立てる。バリューチェーン分析は、事業活動を主活動(購買物流・製造・出荷物流・販売・サービス)と支援活動(調達・技術開発・人事・全般管理)に分け、どこで価値(利益)が生まれているかを分析する。
マーケティング(PLC・競争地位・4P / 4C)
プロダクトライフサイクル:製品は導入期 → 成長期 → 成熟期 → 衰退期をたどり、段階ごとに戦略が変わる。コトラーの競争地位:経営資源の量と質から、リーダー(全方位で市場拡大)・チャレンジャー(差別化でトップを狙う)・フォロワー(模倣で効率よく)・ニッチャー(特定市場に集中)。売り手の視点の 4P(製品・価格・流通・販売促進)と、買い手の視点の 4C(顧客価値・顧客コスト・利便性・コミュニケーション)。原価に利益を上乗せして値段を決めるのがコストプラス価格決定法。
経営管理システム(SCM・CRM・ERP・ナレッジマネジメント)
社内でばらばらだった情報を一元管理して共有する仕組み。SCM=調達から生産・物流・販売まで(サプライチェーン)を企業の枠を越えて管理し、コスト削減や納期短縮を図る。CRM=顧客情報や購入履歴を一元管理して良い関係を築き、顧客ロイヤリティと顧客生涯価値を高める。ERP=生産・販売・会計などの基幹業務の情報を一元管理し、企業全体の経営資源を有効に使う。ナレッジマネジメント=社員のノウハウや経験を共有し、組織全体の問題解決力を高める。
業績評価(BSC・KGI / CSF / KPI)
BSC(バランススコアカード)は、売上や利益(財務)だけでなく、4 つの視点からバランスよく業績を評価する:財務(売上・利益)・顧客(顧客満足度・シェア)・内部ビジネスプロセス(業務の効率・生産性)・学習と成長(社員の能力・満足度)。目標を立てるときは、最終目標の KGI → それを達成するための重要な要因 CSF → 途中の達成度を測る数値目標 KPI の順に決める。
技術開発戦略とイノベーション
技術開発戦略は、市場のニーズや将来の動向をふまえて、どの技術に投資して開発を進めるかを決める。新しい価値を生み出すイノベーションには種類がある:製品そのものを革新するプロダクトイノベーション、開発・製造・物流などの進め方を革新するプロセスイノベーション、既存製品を少しずつ改良するインクリメンタルイノベーション、常識を覆す根本的なラディカルイノベーション。技術は初めゆっくり、やがて急速に進歩し、限界に近づくと伸びが鈍る(技術の S カーブ)。
経営組織と CIO
代表的な組織形態:生産・販売・人事など仕事の機能ごとに分ける職能別組織、製品や地域ごとに独立した事業部を置き、それぞれが利益に責任をもつ事業部制組織、職能と事業の 2 つの軸を組み合わせるマトリックス組織(指示系統が 2 つになる)、目的のために一時的に編成し、達成したら解散するプロジェクト組織。CIO(最高情報責任者)は、経営戦略と合わせて全社の情報戦略を立案・執行する役員。
OR・IE(線形計画法)
OR(オペレーションズリサーチ)は、問題を数学的に分析して最適な解決策を見つける手法。IE(インダストリアルエンジニアリング)は、生産現場の作業手順や工程を改善する手法。線形計画法は、材料や時間などの制約条件(不等式)の中で、利益などの目的関数を最大(または最小)にする組合せを求める。2 変数なら、条件を満たす領域を図にし、目的関数の直線を平行移動して、領域から離れる直前に触れる頂点が答えになる。
分析図(特性要因図・パレート図・OC 曲線)
データを図にして整理する手法。特性要因図は、結果(特性)と原因(要因)の関係を魚の骨のような形にまとめ、真の原因を探る。パレート図は、値の大きい順に並べた棒グラフと累積比率の折れ線グラフを組み合わせ、重点的に対策すべき項目を見つける。累積比率で A・B・C にランク分けするのがABC分析。OC曲線は、抜取検査で、ロットの不良率と合格する確率の関係を表す。
利益と費用・損益分岐点
利益 = 売上 − 費用。費用は、売上に比例して増える変動費(材料費など)と、売上に関係なくかかる固定費(家賃・人件費など)に分かれる。変動費率 = 変動費 ÷ 売上高。売上と費用がちょうど等しくなり、利益が 0 になる売上高が損益分岐点で、損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ (1 − 変動費率)。これより売上が多ければ黒字、少なければ赤字。
財務諸表(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書)
企業の状態を報告する財務三表。貸借対照表(B/S)は、ある時点の財政状態:右側に集めたお金(負債=借りたお金、純資産=自分で用意したお金)、左側にその使い道(資産)。損益計算書(P/L)は、一定期間の経営成績:売上から費用を段階的に引いて、売上総利益 → 営業利益 → 経常利益 → 税引前当期純利益 → 当期純利益を求める。キャッシュフロー計算書は、一定期間の現金の増減を営業・投資・財務の 3 つの活動に分けて示す。
減価償却と在庫評価(先入先出法)
設備や機械など、時間とともに価値が減る資産の購入費を、使う年数にわたって少しずつ費用にすることを減価償却という。毎年同じ額を費用にする定額法では、1 年の減価償却費 = (取得価額 − 残存価額) ÷ 耐用年数。在庫の評価方法の 先入先出法は、先に仕入れた商品から先に売れたとみなして、売上原価を計算する。
知的財産権(著作権・産業財産権)
人の知的な活動から生まれたものを守る権利が知的財産権。文化に関わる著作権と、産業に関わる産業財産権に分かれる。著作権は、著作者の思いや名誉を守る著作者人格権(公表権・氏名表示権・同一性保持権)と、利用を許可して利益を得る著作財産権(複製権など)からなり、届け出なしで創作した時点で発生する。プログラムも著作物で、ソースプログラムもオブジェクトプログラムも保護されるが、アルゴリズムやプログラム言語そのものは保護されない。産業財産権は特許権(発明)・実用新案権(物品の形状・構造の考案)・意匠権(デザイン)・商標権(マーク・ロゴ)の 4 つで、特許庁への出願・登録が必要。
セキュリティ関連法規
不正アクセス禁止法は、他人の ID・パスワードを無断で使ってアクセスする行為や、他人の ID・パスワードを本人の許可なく第三者に教えるなど、不正アクセスを助ける行為を禁止する。サイバーセキュリティ基本法は、国や自治体などのサイバーセキュリティ対策の基本理念と責務を定める。個人情報保護法は、個人情報を扱う事業者の義務を定めて、個人の権利と利益を守る。コンピュータウイルスの作成・提供や、データを消して業務を妨害する行為などは刑法で処罰される。
労働関連法規(派遣と請負・労働基準法)
労働者派遣契約:派遣元企業(派遣会社)が雇用する労働者が、派遣先企業の指揮命令を受けて働く。請負契約:請負企業が仕事の完成を約束し、発注企業は成果物に報酬を払う。請負では、労働者に指示を出すのは請負企業で、発注企業が直接指示すると偽装請負になる。労働基準法は、賃金や労働時間など労働条件の最低基準を定める(例:法定労働時間を超えて働かせるには労使協定(36 協定)が必要)。
標準化(ISO・JIS・IEEE・IETF)
仕様や構造などをそろえることを標準化という。ISO(国際標準化機構)は工業製品やサービスの国際規格を定める(例:品質マネジメントの ISO 9001)。JISは日本の国家規格(日本産業規格)。IEEEは米国の電気・電子の学会で、LAN の規格(IEEE 802.3 など)を定める。IETFはインターネットの技術を標準化し、仕様を RFC として公開する。
クラウドの形態(パブリック・プライベート・ハイブリッド)
クラウドは、誰が使えるかで 3 つに分かれる。パブリッククラウド=事業者が不特定多数の利用者に提供する汎用のクラウド(安く、すぐ使える)。プライベートクラウド=自社専用に構築・利用するクラウド(自由度とセキュリティが高い)。ハイブリッドクラウド=自社専用のクラウドと汎用のクラウドを連携させ、データやアプリケーションを相互に運用できるようにしたもの(機密データは専用、その他は汎用、のように使い分ける)。
Web サービスの連携(マッシュアップ)
マッシュアップは、複数の Web サービスの機能やコンテンツを組み合わせて、新しいサービスを作ること(例:飲食店のページに、別のサービスの地図を表示する)。そのうち、ある Web サービスの出力を、別の Web サービスの入力として使い、処理を連結させるものをロジックマッシュアップという(例:条件に合う宿のリストを A のサービスから取得し、その宿の空室状況を B のサービスで調べて表示する)。
人材と組織(ダイバーシティマネジメント・HR テック)
ダイバーシティマネジメントは、性別・年齢・国籍などの面で、従業員の多様性を尊重することによって、組織の活力を高めること。HRテックは、採用・育成・評価・配置などの人事の業務に、ビッグデータ解析や AI などの ICT を活用して、業務改善と社員の満足度向上を図るソリューション(HR = Human Resources、人的資源)。似た言葉:仕事と生活の調和を図るワークライフバランス、目標の達成度で評価する目標管理、金融と IT を組み合わせたフィンテック。
イノベータ理論とブルーオーシャン戦略
イノベータ理論は、新商品が世の中に広まる過程で、消費者を購入する時期の早い順に 5 つに分ける:イノベータ(2.5%、最も早く採用)・アーリーアダプタ(13.5%、流行に敏感で自ら情報を集めて判断し、周りへの影響が大きい)・アーリーマジョリティ(34%)・レイトマジョリティ(34%、周囲の大多数が使ってから採用)・ラガード(16%、最も保守的)。アーリーアダプタとアーリーマジョリティの間には越えにくい溝(キャズム)がある。ブルーオーシャン戦略は、競争のない未知の市場を切り開く戦略で、競争の激しい既存市場はレッドオーシャンという。
ソフトウェアライセンス
ソフトウェアの使用許諾(ライセンス)の契約形態:大量購入者向けに、インストールできる台数をあらかじめ決めて使用を認めるボリュームライセンス、特定の施設(場所)の中なら台数・人数の制限なく使えるサイトライセンス、パッケージの包装を開けた時点で使用許諾契約に同意したとみなすシュリンクラップ契約、ダウンロード時などに画面の「同意する」を選ぶことで成立するクリックラップ契約。